呼び起こすもの

晩秋というよりも通り越して冬の寒ささえ感じます。そしてショーウィンドーはもはやクリスマスの装飾で秋を感ぜずにいる今日この頃です。
それでも職場のあるビルから一望して見える景色は東京のビル郡とともにその合間に意外なほど点在している小さな森です。その木々が一色ではなく多色に、また日を追うごとに綺麗に色付いてきています。

さて2週間程前ですが、岡山倉敷へちょっとした用事と観光もかねて行ってきました。

そこで約10年ぶりに大原美術館へ入ったわけです。

実は1年前に原田マハさんの小説を2冊ほど手に取りその内1冊が「楽園のカンバス」でした。この物語の始まりはここ大原美術館が舞台になっているのですがその中に美術館で所蔵されている作品も出てきます。それを確かめながら作品を見るのも楽しみの一つでした。そして一つの作品を見てはっとしました。

全体的に青い色調で画角の前面にはテーブルと椅子が2脚、テラス席だと思われます。

奥には街中をゆったりとした川が流れている風景。うっかり作品名と作者を失念してしまいましたが、この作品、昔の私がとても惹かれた絵だったということは思い出しました。そしてやはり今の私もこの絵の前で足を止めたのでした。

10年のうちに価値観や考え方が変わったと自分でも実感しています。けれども理屈ではない、好きや嫌いなどの感覚はそう単純に変わらないのではないかと思いました。もし変わったと感じるならそれは感覚の進化というべきなのではないかな。

1枚の絵と対峙しつつ、当時の自分とも対峙したかのような瞬間でした。