憧れのその先は

子供の頃から少し夢見がちでそして学生、社会人となってからもやっぱりそうでここではないどこかへ行きたい、そしてそこはきっと素敵な所なのだと思っている自分がいた。

 

憧れは私にとって常に大切な要素だった。その憧れだった一つに京都で暮らしたいという思いがあった。

過去形ということはつまり私はその憧れの京都で今現在、暮らしているということです。

高校の修学旅行で初めて訪れた京都に私は一目惚れをしたようなもの。

日本狭しといえども当時の私が住んでいた関東近郊の風景や空気感とは違うものを感じ取っていました。歴史の教科書でしか見た事がなかった神社仏閣が本当に存在しているという事、清水寺まで続く二年坂、三年坂の絵葉書のような風景、夕陽に染まる仁和寺五重塔の荘厳さ・・・その見るもの全てに私はすっかり魅了されてしまいました。

それからというもの大学生になってもそれから社会人になってからは特に京都への憧れは強くなっていき、仕事でうまくいかない事があれば週末には京都へ逃避旅行。JR京都駅で新幹線を降りた瞬間からふわりとした空気に迎えられ、土産物店の前を通ってお香の優しい香りに包まれればもうここは古都京都の地。周りの景色ははんなり薄桃色に染まって見えるようでした。

京都は訪れる度にいろいろな発見がありました。初めのうちは修学旅行の延長線上でいかに神社仏閣を巡るかという事が京都の楽しみだと疑わなかった私はバスの路線図を眺めながらタイトなスケジュールをこなしていました。(今思えばよくそんなにまわれたものだ!)春の桜、秋の紅葉を経て、次第に老舗のお店や喫茶店巡りの楽しみを覚え、石庭で何とはなしにぼんやりしてみたり、鴨川のほとりを歩いたり、京都は春夏秋冬いずれも良いけれど、やっぱり静かな冬が良いと通ぶってみたりと私の京都への想いは募るばかり。溢れんばかりの京都への想いとともに4年前に移住しました。

 

憧れが叶って私は幸せか?

それが良く分からなくなってしまいました。わくわくしていたのは半年程で次第に薄桃色の空気はすっかり消え去り、京都に住んでいるのに京野菜なんて九条ねぎと万願寺唐辛子くらいしか食べた事ないし、意外と物価は高いし、夏は暑いし、冬は寒いし、バスは常に混んでいるしで・・・。

憧れが強かった分、普通のちょっとした事がマイナスに反映されてしまうことになってしまった。ある意味、私は京都と結婚してしまったようなものなのかと最近は感じている。遠距離恋愛でうまくいっていた関係が結婚してしまった為にそれが日常になってしまった。

でも最近はその思いも一周回って、現在は桃色フィルターはかかっていない日常の京都で暮らしているからこその良さ、やっぱり京都は良いと思えるようになってきました。昔感じていた高揚感はないのだけれど、一味違った京都が見えてきたのでまたの機会に綴っていきたいと思います。