京の春

私にとっての花の便りは一条戻り橋のたもとにある桜です。

ここを皮切りにその年の桜の季節が始まるのです。その次が御所にある枝垂れ桜。それから千本今出川の交差点にある桜とこの時期は京都の碁盤の目をてくてく、桜の咲き加減を見て回ります。

例年この時期に街中を歩いているとこの4月からの大学生が不動産巡りをしているのを見かけます。京都という場所はやっぱり学生の時に過ごしたかった場所だとつくづく思います。特徴的な場所、いわゆる神社仏閣から喫茶店、鴨川沿に出町柳のデルタ、四条河原町木屋町ときっと後に学生時代を振り返った時に楽しいことも悲しいことも京都特有の固有名詞と四季折々の風景とともに思い出されてまるで小説の主人公のような思い出になるんだろうなと思います。10代、20代の一年はその一年毎に本当に貴重な時間だったと今だからこそ実感しています。

 

千本今出川の交差点から少し北にある千本玉寿軒。

ガラス越しに定番の和菓子と季節のお干菓子が並んでいます。しばらく眺めて四角い暖簾を潜って引き戸を開けます。老舗のお店が持つ独特の空気感と仄暗さ。私はこの静かな空間で和菓子を選ぶのが好きです。そういえば昨年もこの桜の時期にこちらで和菓子を買ったような気がします。

どうやら少しずつ私の定番ができてきているようです。

そんな私も京都4年目の春を迎えます。